くしゃみが呼気時にみられる防御反射であるのに対し、「逆くしゃみ」は吸気時に短時間認められる発作性の吸引反射です。私たちヒトでは一般的な症状ではないため、真似て表現することが難しく、診療中に逆くしゃみが疑われた場合、どんな症状でしたか?と伺うと言葉や動作に詰まってしまうこともしばしばです。
逆くしゃみは発作性の努力性吸気ですが、呼吸困難や運動不耐といった症状は見られず、逆くしゃみが落ち着くと何事もなかったかのようになります。ただ、一見すると窒息性呼吸困難のように見えるため、はじめて見る場合は驚いて不安になる方も多いです。
また、逆くしゃみは、一見するとくしゃみや咳のように見える場合が多く、特に猫では逆くしゃみとくしゃみや咳との区別が難しい場合も多いと言われています。
チワワやキャバリアといった特定の犬種では、若いうちから逆くしゃみが発現します。若齢時に発現する逆くしゃみの原因には、軟口蓋の震えや喉頭開口部への喉頭蓋の嵌入などがあるといわれてますが、ハッキリとは分かっていません。成長とともに喉の構造が変化して症状が見られなくなるケースがありますが、成長しても逆くしゃみをしているケースを多くみますので、原因はそればかりではなさそうです。
一方、病的に見られる逆くしゃみの原因は、咽頭鼻部(鼻の奥、喉の手前)の異常だといわれています。この部位に異物や腫瘍、炎症などがあると、犬でも猫でも症状として逆くしゃみが認められることが多いです。小さな異物や軽度の炎症の場合は、一過性の症状で終わることも多いので、逆くしゃみが続く場合には受診を検討することになります。
逆くしゃみが続いている場合にご家庭で出来る対処は、嚥下反射を促すことです。喉をさすってあげたり、少量の水を与えたりして、飲み込み動作を引き出してあげてください。逆くしゃみであれば収まることが多いです。
当院のインスタグラムに看板猫のトラの逆くしゃみの動画をあげていますので、どんな症状か確認してみてください。(犬の逆くしゃみの動画はネット上にたくさんアップされているので、探してみてください)