こんにちは、獣医師の出岡です。今年も飼主の皆様に分かりやすく、病気についての知識や健康維持に関する情報をお届けしていきます。さて、今回は避妊・去勢手術についてお話しします。「健康な身体にメスを入れるのはかわいそうだけど、やっぱり手術したほうがいいのかしら?」「手術はいつ行うのが最適?」「手術の方法について詳しく知りたい!」「予約を入れたいのだけれど、そもそも日帰り?入院?」避妊・去勢手術はわんちゃん????、ねこちゃん????、うさぎさん????、そして飼主様にとって、一大イベントです。この記事をお読みいただくことで、飼主様の不安が少しでも解消されれば幸いです。
〇避妊・去勢のメリット/デメリット
<メリット>
・望まない妊娠を回避することができる
・病気の予防につながる:(女の子)卵巣、子宮、乳腺などの病気 (男の子)精巣の病気、前立腺肥大など
・攻撃行動やマーキングなど、問題となりうる行動の抑制
・交配できないことによるストレスの予防
当院では、わんちゃん・ねこちゃん・うさぎさんでは、交配を考えていないのであれば避妊・去勢を行うことをおすすめしています。手術を行うことで望まない妊娠を回避することができます。加えて、男の子女の子ともにさまざまな病気の予防につながります。また、攻撃行動、マーキング、過剰な鳴き声などの問題となりうる行動を抑えることにもつながります。そして、動物たちが“発情しているのに交配できないストレス”を抱えることもなくなります。
<デメリット>
・麻酔、手術のリスク ←術前検査、適切な麻酔管理などによりリスク回避!
・代謝が落ち、食餌量が増えるため太りやすくなる ←適度な運動と食事管理の徹底を!
麻酔による低体温や低血圧、不整脈など、手術による出血、感染症などのリスクは手術を行う限り必ずついてきます。当院では安全に手術を行うために、術前検査として心電図検査、血液検査、血液凝固検査を実施しています。また、手術中も心電図や血中酸素飽和度のモニタリングを行いつつ、動物の状態に合わせて適切な麻酔管理を行っています。そして、鎮痛薬や抗菌薬など麻酔前に処置を行い、合併症の予防に努めています。そのほかのデメリットとして、避妊・去勢手術後は活動性の低下、食餌量の増加により太りやすくなる、ということが挙げられます。そのため、適度な運動と食事管理を徹底することが肝心です。避妊・去勢後の動物用のフードを利用するのも一つの手です。
〇手術の適期について
<わんちゃん>
生後6~7ヶ月齢に行うことが多いです。永久歯が生えそろった段階で、避妊・去勢手術と同時に抜けずに残った乳歯を抜歯する、というパターンが多いです。一方、「発情が来る前になんとしても手術をしておきたい」「男の子で、足を上げておしっこをさせたくない」という場合には、歯の生え変わりを待たずに手術を行うこともあります。なお、特定の犬種では早期の避妊・去勢手術によりかかりやすくなる病気があることが報告されているため、実施時期をご相談させていただく場合があります。
<ねこちゃん>
女の子では、基本的には体重が2kgを超えた頃に行うことが多いです。男の子では、精巣下降が完了していれば体重にかかわらず実施可能です。4カ月齢前後(1年目の最終ワクチンを終えるタイミング)で手術の予定を立てることが多いです。
<うさぎさん>
男の子女の子ともに、生後6カ月~1歳齢での手術が望ましいです。
〇手術の方法
<避妊手術>
基本的には、卵巣・子宮どちらも摘出します。お腹を開けて、血管や組織をシーリングシステム(コテのようなもので挟んで焼くことで止血する道具)を活用する、もしくは吸収糸(時間の経過とともに体内で代謝され、消える糸)で縛ることで血流を遮断しながら、卵巣・子宮を分離します。周囲組織の損傷・出血がないかを確認した後、お腹を閉じて終わりです。わんちゃん、ねこちゃんでは通常、10~14日後に抜糸処置を行うようにしています。一方、野良猫さんやうさぎさんでは、エリザベスカラーによる傷口保護が難しいこと、特に野良猫さんで抜糸が困難であることから、抜糸の必要がない縫合方法(吸収糸を用いた皮内縫合)を採用しています。
<去勢手術>
ねこちゃん、うさぎさんでは陰嚢(いわゆる玉袋)の皮膚を切開して、精巣を引っ張り出します。わんちゃんでは陰嚢と陰茎の間の皮膚を切開します。精巣を引っ張ると血管・精管も一緒に引っ張り出されてくるので、まとめてシーリングシステムもしくは縫合糸での結紮により血流を遮断し、精巣を分離します。ねこちゃんでは皮膚の縫合は行いません。うさぎさんでは皮膚を吸収糸にて縫合し、後日糸が残っていれば抜糸を行います。わんちゃんでは女の子と同様、10~14日後に抜糸処置を行います。
〇手術の予約について
ねこちゃん、うさぎさん、男の子のわんちゃんは、基本的に日帰りです。女の子のわんちゃんは日帰りもしくは1泊入院で、わんちゃんの体格や年齢によってどちらにするか飼い主様と相談の上決めていきます。手術に先立って術前検査を行いますが、手術当日もしくは手術前1週間の間に来院いただいての実施となります。もし、術前検査にて異常値が見つかった際は、手術を行うにあたってのリスクを事前にお伝えしてからの手術実施となりますのでご安心ください。予約のタイミングとしては、2週間~1カ月前ですと希望の日時に空きがある可能性が高いのでおすすめです。
動物病院で行う手術のうち大部分を占めるのが避妊・去勢手術。とはいえ、それぞれのわんちゃん、ねこちゃん、うさぎさんにとっては一生に一度のことです。飼い主様から大事な動物たちをお預かりしての手術となりますので、何事もなく元気な姿でお返しすることを第一に考えています。去勢・避妊手術に関する不安やお困りごとがございましたら、当院へぜひご相談ください!(=^・^=)