こんにちは、獣医師の出岡です。
第5回目となる今回は、「外耳炎」についてお伝えします。外耳炎とは、耳介(耳たぶ)から鼓膜までの間に起こる炎症のことです。アレルギー症状の一つとして耳の痒みが見られることもあれば、散歩中に植物の種が耳の穴に入ってしまうことにより痛み・痒みが生じることもあり、その原因は様々です。外耳炎は放っておくと悪化し、完治がかなり難しくなります。耳をかきむしる、頭を強く振る、耳アカが多いなど、普段と異なる様子が見られた場合は早めにご来院をお願いします。
症状・原因
耳の痒み・痛みから、耳をかきむしる、頭を強く振るといった動作が見られます。また、耳の赤み、腫れ、耳アカの増加が見られることがあります。症状が長引くと、耳血腫(耳介に血だまりができること)や鼓膜の損傷などにつながり、治癒が難しくなります。
外耳炎の原因としては、ミミヒゼンダニの寄生、異物侵入、アレルギー、腫瘤などがあります。そのほか外耳炎になりやすくなる要因として、高温多湿の環境、垂れ耳、先天的に耳道の狭い犬種(フレンチ・ブルドッグ、パグ、チワワをはじめとする短頭種など)、多量の耳毛(トイ・プードル、ミニチュア・シュナウザーなど)、シャンプーや水泳後の水の拭き取り不足などがあります。
検査
はじめに耳の穴を観察し、耳垢・炎症の状態、耳毛、匂い、腫瘤や異物の有無などを確認します。次に、耳アカを採取し、ミミヒゼンダニや細菌、マラセチア酵母が感染していないかどうかを顕微鏡にて検査します。必要に応じて麻酔下にて耳の奥を観察し、異物や腫瘤病変、鼓膜の損傷がないかを精査します。
治療
下記の治療をその子の病状・背景疾患に応じて、組み合わせて行います。基礎疾患としてアレルギーが疑われる場合には、アレルギー症状を抑えてあげることが第一となります。
・多量の耳アカに対して:多量の耳アカが溜まっている場合、生理食塩水や洗浄液を使用して耳洗浄を行います。耳垢を除去することで薬の効果を高めたり、治りを早くすることができます。※炎症が強く動物が嫌がってしまう場合には、炎症が治まってから実施します。
・寄生虫が見られた場合:顕微鏡検査にてミミヒゼンダニが発見された場合、もしくは症状から感染が強く疑われる場合、駆虫薬の投与を行います。スポット薬を使う場合、2週間間隔で2~4回の投薬が必要となります。
・異物や腫瘤が見られた場合:必要に応じて麻酔をかけて、その除去を試みます。異物としては、散歩後にイネ科植物の種子(芒:のぎ)が入り込んでしまうことが多いです。
・炎症が強いとき:耳道の腫れや痒み・赤みなど炎症が見られる場合、コルチコステロイドなど抗炎症薬を使用することがあります。症状やその子の性格に合わせて、点耳薬や内服薬を使用して治療します。
・細菌やマラセチア酵母の感染がある場合:細菌やマラセチア酵母の数が多いときには、抗菌薬や抗真菌薬による治療を行います。基本的には点耳薬による外用療法を行いますが、感染数が多い時には内服薬を検討します。おうちでの点耳薬の使用が難しい場合、病院で塗布する持続性の点耳薬を使用することもあります。
予防
・耳を普段から観察できるよう、触る・見ることに慣れさせましょう。通常の状態を把握することで、いち早く異常を発見できるようになります。また、外耳炎の治療では点耳薬を使うことが多いため、抵抗なく治療を行うことができるというメリットもあります。
・もともと耳道が狭い品種については耳アカがたまりやすくなっているため、おうちでの耳掃除や病院・トリミングサロンでの耳洗浄を行い、リスクを下げましょう。耳毛が多い子については、予防的に耳毛を抜くこともあります。耳洗浄や耳毛抜きなどの処置については、当院にて実施することも可能です。
・おうちでの綿棒を使用した耳掃除は耳の穴に傷がつきやすく、外耳炎を引き起こす・悪化させる恐れがあるため、ウェットティッシュなど柔らかい布で優しくふき取る程度にとどめましょう。
・シャンプーや水遊びの後は耳に入った水をしっかり拭き取りましょう。
・お散歩やお出かけから帰ってきたら、異物が耳の中に入っていないか確認しましょう。異物が耳の中に入った場合、動物たちはかなり激しく頭を振ったり掻いたりする動作が見られるはずです。
おうちの子が耳を普段より気にしている場合、慢性化する前にぜひ早めのご来院をお願いします。また、あまり本人が気にしていなくても、「うちの子の耳は汚い気がする」「耳が臭う」「耳掃除の仕方がわからない」など、飼い主様が気になることがあれば、お気軽にご相談ください。