季節の変わり目は、気温が上下したり天気が周期的に変わったりと、私たちは体調を崩しがちです。
動物たちが季節の変わり目を意識することはないと思いますし、室内にいる場合にはそれほどの変化はないように思いますが、診療現場では、動物たちも季節の変わり目に体調を崩しやすいと感じています。
具体的に多いのは嘔吐や下痢といった消化器症状です。今回は、現場でよく遭遇する急性の嘔吐や下痢について、少しお伝えしたいと思います。
動物たちの急性の嘔吐や下痢は、急性胃炎や急性腸炎といった一般的な症候名がつけられます。
原因は一般的に、腐敗物や中毒性植物などの摂食、化学的刺激物や様々な薬剤、食物有害反応、特定の食物に対する不耐症、など挙げ始めれば多くのものが考えらます。また、腎臓病やホルモン疾患など、他の疾患の症状の一つとして認められることもあります。
ただ、現場では、とくに思いつく原因もなく突然症状をしめして来院されるケースがほとんどです。そうした場合に、この時期お伝えするのは、季節の変わり目に起こる身の周りの環境変化がストレスとなり発症するのではないかということです。
「ストレス」とは、非常に便利な言葉だなぁと感じますが、その定義は、「外部からの刺激などによって体の内部に生じる反応のこと」とされています。私たち獣医師が参考にする教科書にも急性の胃炎や腸炎の原因の一覧にストレスが記載されています。
では、動物にとってのストレスとは何でしょうか。動物たちに直接聞ければ難しいことはないかもしれませんが、その多くは、外部からの刺激、すなわち環境の変化ではないかと考えられます。環境の変化については、季節の変わり目に代表される環境変化、ドッグランやトリミングサロン、ペットホテル利用による変化、いつもと異なる食事やおやつなどの食事の変化、などいろいろと挙げられると思います。また、旅行や遠出も、楽しいですが疲労するため、ストレスになると思われます。
ですので、この時期(季節の変わり目)に急性の胃炎や腸炎が発生しやすいのは、こうしたストレス因子のひとつによると考えられると思うのです。
しかしながら注意しなければならないのは、「これはストレスですね」と安直に考えないことです。問診や身体検査でストレス因子による急性胃炎や急性腸炎と言えることは多いと思いますが、本当にそうなのかは常に考えなければなりません。そして、他の疾患が考えられた時や否定しておきたい時には検査を進めていく必要がありますし、それ相応の治療が必要になります。
最後に、こうしてストレスのことを書いておきながら、私個人としては思うのは、ストレスと考えられるイベントがあろうとも動物たちは家族の反応を一番見ているということです。ですので、飼主が楽しければ一緒にいる動物たちも楽しいと思いますし、お互いに楽しく毎日を過ごせるようにしていくのが最良の選択ではないかと思っています。もちろん、体調を崩した際は、いらしてくださいね。
10月下旬から11月上旬にかけては、急性胃炎や急性腸炎と考えられる症例が非常に多かったため、診療中にお伝えすることの一部を書いてみました。こうした記事が皆さまのお役に立てば幸いです。