どうぶつ医療コラム

猫の元気がない…貧血(ヘモプラズマ感染症)に注意。

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長野県内は、猫の保護活動をされている方も多く、猫にとっても、新たに猫を迎える家族にとっても、とてもいい環境だと感じることがあります。

さて、そんな保護猫さんに関連して、長野県内では保護された猫ちゃんや外を行き来することがある猫ちゃんに特徴的な貧血に遭遇することが多くあります。その原因となるのが、ヘモプラズマ感染症(赤血球指向性マイコプラズマ感染症)です。

猫のヘモプラズマは、マイコプラズマという細菌の仲間に分類されています。マイコプラズマは、人では呼吸器疾患などを引き起こすことが知られており、少し変わった生物学的性格を持っています。猫のヘモプラズマは赤血球指向性があり、主に赤血球を壊すことで貧血を引き起こします。

ヘモプラズマの感染経路は分かっていませんが、外部寄生虫による吸血や、猫同士のけんかによる咬傷、垂直伝播(母から子へ)といった経路が主なものだと考えられています。ですので、それまで外にいた保護猫や、外を行き来する猫に感染事例が多いと考えられます。

ヘモプラズマ症を発症すると、貧血が進行することにより元気消失、食欲不振、沈うつなどが認められ、黄色味の強いおしっこが出たり、鼻の色が真っ白に見えたりします。

血液検査を実施すると、貧血に加えて、血液の顕微鏡検査にて病原体であるヘモプラズマが発見されることが多いです。ただ、最近ではPCR検査も診断に有用なため、併せて実施すると診断精度が向上します。添付した写真の、中央やや左上の赤血球にのっている紫色の点状のものがヘモプラズマです。

診断が確定すると治療に移ります。PCR検査を待っていると治療が遅くなりますので、血液の顕微鏡検査とその他の徴候が合致すれば治療を開始します。

治療の柱は2本です。まずは一本目の柱は、ヘモプラズマに対する抗菌薬治療です。一般的な抗菌薬はあまり効果的でないため、ドキシサイクリンという抗菌薬を使用します。治療期間は、3週間から4週間程度です。途中に貧血の改善があるかを評価したりしながら、治療期間を決定していきます。

2本目の柱は、貧血に対する治療です。ヘモプラズマによって赤血球が壊されて貧血になるだけでなく、本人の免疫反応が過剰になることでさらに貧血が進むことがあるため、治療の初期には過剰な免疫反応を抑える治療が必要です。また、貧血が重度の場合は他の健康な猫から輸血を実施します。

ヘモプラズマ症は、治療によって順調に快復することが多いです。ただ、キャリア猫としてヘモプラズマと共存する場合もあり、再発することもあるため、注意が必要です。

今はまだ元気で感染していなくとも、外に出る機会がある場合には感染するリスクがあります。4月は新生活も始まり、人も猫も生活が一変する季節です。そんな季節だからこそ、今回の記事が、今一度こうした病気の理解とともに生活スタイルを見直すキッカケになれば幸いです。

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