お家に迎えたワンちゃん、無邪気に遊ぶ愛くるしい我が子の、その尖った乳歯が遊んでいる際に手足に当たると痛いですよね。子犬の頃に活躍する乳歯もそんな無邪気な時期の後半には、私たちヒトと同じで、永久歯に生え変わります。
永久歯への生え変わりは、おおよそ生後4~5ヵ月齢頃に下顎の前歯から始まり、通常7ヵ月齢頃には終了するとされています。
乳歯遺残とは、そうした歯の交換期を過ぎても乳歯が脱落しない状態のことです。脱落しなかった乳歯は、その部位の永久歯と併存することになり、歯垢や歯石がその部位に付着することで歯周病の温床になります。
写真は、犬歯の乳歯が残ってしまったワンちゃんと抜歯した乳歯です。通常は乳歯の根が徐々にとけていき、ぽろっと抜けますが、それがとけずに残ると乳歯が抜けません。写真の通り、残ってしまった乳歯は根がしっかりしているため、麻酔下での抜歯が必要です。
残ってしまった乳歯は、前述のように歯周病の原因になったり、永久歯の萌出を妨げて不正咬合の原因になったりするので、抜歯が適応になるのですが、重要なのは抜歯のタイミングです。
永久歯が萌出してくると乳歯が抜けますが、数日から3週間ほどの併存期間があります。多くは2週間をこえないため、2週間以上抜けない場合は抜歯が必要です。また、永久歯の根尖閉鎖の時期は通常10ヵ月齢頃といわれているため、この時期を過ぎると、生えたり生えなかったり抜けたり抜けなかったり、といった歯の動きはなくなります。ですので、遅くとも1歳の誕生日を迎える前には、乳歯が残っている場合に抜歯を実施することが必要だと考えています。
ワンちゃんの心身の成長とともに口の中の成長もよく観察していただくことオススメします。
当院では、不妊・去勢手術は6ヵ月齢を目安に実施することが多いのですが、その頃に歯の生え変わりも同時進行しているため、その様子で、不妊・去勢手術と乳歯抜歯(必要に応じて)を同時に実施することを提案しています。ただ、男の子の場合は足を挙げてオシッコをさせたくなかったり、女の子の場合は意外と早く初回発情を迎えたり、と行動や成長に個体差がありますので、優先順位を考えて不妊・去勢手術や乳歯の抜歯の時期を考える必要があります。
迷う場合も多いと思いますし、大切な子犬時期に色々と悩むこともあると思いますので、今回の記事を参考にして、ご来院いただき相談しながら決めていければいいのではないかと思います。