どうぶつ医療コラム

突然の昏睡状態!猫の糖尿病性ケトアシドーシスとは!?

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今回は、猫ちゃんのご家族であれば知っておきたい糖尿病性ケトアシドーシス(糖尿病性昏睡)についてお知らせしたいと思います。

猫ちゃんの内科的緊急疾患の代表選手である「糖尿病性ケトアシドーシス」は、その名の通り糖尿病が原因となる病態です。そもそも猫ちゃんの糖尿病がわからない!ということがあると思いますので、まずはその話を簡単にしたいと思います。

糖尿病は、その名もズバリ「尿に糖が出てしまう病気」です。しかし、その本質は、「体の細胞が糖分を上手く利用できないために様々な不具合が生じること」です。

体の細胞は、糖を自身に取り込むために膵臓から分泌される「インスリンという鍵」を必要としています。ちょうど皆さんがお家に入る際に鍵を開けるイメージです。そのインスリンが不足しているか、体に対して効かない状態になっていると、体の細胞は血液をめぐっている糖を利用することができません。そうすると、利用されない(できない)糖が血液の中を沢山めぐるようになり、高血糖の状態になります。高血糖状態が続くと、本来尿中には出てこない糖が、限界を突破して尿中に出てくることになります。尿に糖が出始めると糖による利尿作用が発現するため、尿量が格段に増えてしまいます。そして、それを補うために沢山水を飲むようなります。

多くの猫ちゃんは、この多飲多尿状態がいつもと違うことに飼主様が気付かれ、来院されることで診断、治療へと進んでいきます。

前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。

糖尿病の初期では、多飲多尿と、糖を利用できないことに起因する多食状態が重なり、一見するととても元気にみえます。しかし、毎日接していると気付きませんが、糖が利用できないので、実はどんどん痩せていきます。

そうして疲弊していく体は、糖を利用できなくても働く必要があるので、糖以外のエネルギーを必要とします。そこで、登場するのが脂肪です。体には蓄えられた脂肪がありますので、ピンチヒッターとして肝臓で代謝されてエネルギー源となります。ただ、普段は使われることの少ない経路で脂肪を利用することになりますので、そこで出てくる老廃物も、いつも通りとはいかずに排泄が遅れて蓄積することになります。この老廃物が「ケトン体」です。

やがてケトン体は、尿中に排泄されるようになりますが、血液中の利用できない糖も相変わらず尿に排泄されています。そうすると、ケトン体と糖がダブルパンチで体の水分を尿中に引っ張ってきてしまうことになり、重度に脱水が進むことになります。

状態の悪化に伴い、食欲廃絶や嘔吐、下痢などが発症すると、脱水症状が極度に達して「突然の昏睡状態(糖尿病性ケトアシドーシス)」に至るのです。

治療には、点滴による水分とミネラルの補給、糖の利用を促進するためのインスリン治療、そして嘔吐や併発する他疾患などに対する対症療法、が必要です。入院管理下で治療を実施しますが、状態は非常にシビアですので、時に命を落としてしまうこともあります。早期であれば治療反応も良く退院可能であることが多いです。

以上が、糖尿病とそれに続く糖尿病性ケトアシドーシスの概要です。

どんな病気でも、早期発見と早期治療が非常に重要です。今回ご紹介した病気は、「多飲多尿」が認識可能な症状のスタートです。日頃から、我が家のアイドルの状態を把握し、少しでも気になることが出てきたときは、ぜひ気軽に相談にいらしてください。

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