こんにちは、獣医師の出岡です。
連日の猛暑で身体がヘトヘトになっている方も多いのではないでしょうか。私たちヒトのみならず、わんちゃんやねこちゃんをはじめ動物たちも同じく熱中症には注意が必要です。動物での熱中症の症状や予防方法などについてお伝えします。
①動物の熱中症は死亡率がとても高いんです!!
熱中症が原因で病院を緊急受診する犬の死亡率は50%にものぼる、というのはご存じでしたか?熱中症は高温多湿の環境下において、体に熱がこもり、脱水状態が進むことで全身の臓器に異常をきたします。体温の上昇により全身の細胞に存在するタンパク質が変性してしまうことにより、各臓器が機能障害を起こします。初期は元気食欲の低下、嘔吐や下痢などの消化器症状、呼吸困難、血栓症、意識消失…など、症状は多岐にわたります。熱中症を発症してから救急処置を行い、一命をとりとめたとしても、長期にわたって不調をきたすこともしばしば。最悪の場合、死に至ることも少なくなく、かなり怖い病気なのです。
②わんちゃんやねこちゃんは、ヒトよりも熱中症になりやすい!!
ヒトでは、体温が高くなると汗をかき、汗が蒸発することにより熱が奪われ体温を下げることができます。ヒトは全身の皮膚から汗を流すことができますが、わんちゃん、ねこちゃんは肉球でしか汗をかけないので、体温を下げるのが苦手です。汗をかく代わりにパンティング(ハッハッと浅い呼吸を繰り返す)によって体内の熱を逃がしていますが、それにも限界があります。体温調節機能が少ないため、一度体温が高くなると下げるのが難しいのです。また、お散歩に出かけるわんちゃんは、地面との距離が近く輻射熱の影響を受けやすいため、短時間で熱中症を発症しやすいといわれています。
短頭種(犬:パグ、フレンチブルドッグなど/猫:エキゾチックショートヘア、ペルシャなど)、長毛種、肥満、呼吸器疾患(気管虚脱、喉頭麻痺など)、心臓病、腎臓病、幼齢もしくは老齢の子は熱中症になりやすいので特に注意が必要です。
③エアコンの効いていない部屋や車内に放置しないで!!暑いときは散歩や運動は控えめに。
気温25℃以上、湿度60%以上では熱中症になる危険性が高まります。室内ではエアコンや扇風機、除湿器などを効果的に使い、動物たちにとって快適な温度・湿度を保ってあげましょう。その子によっては、ヒトが肌寒く感じるくらいが丁度いいこともあります。また、車内、サンルームなどの高温環境には短時間でも放置しないようにしてください。(ちなみに、トリミング時のドライヤーの熱風が原因となることもあり、夏に関わらず熱中症になる可能性はあります。)
基本的に、高温多湿環境での運動・散歩は控えてください。舗装された道路は夜間も熱いままのことがあり、注意が必要です。散歩に行く時間を早朝、夜間など涼しい時間帯にずらすとともに、散歩に出かける前に地面を触って、熱くないかどうか確認しましょう。
④冷却グッズをうまく活用しよう
首に巻くネッククーラー、冷感素材で作られた服、アルミや接触冷感素材を使った冷却マットなど、動物用の暑さ対策グッズは色々あります。室内・室外ともに冷却グッズを有効利用しましょう。
そして脱水の予防のためには、充分な水分補給が大切です。水をこまめに交換して新鮮な水が飲めるようにする、循環ろ過ができるウォーターファウンテン型の給水器を使う(水が冷たいままに保たれやすい)、お湯が好きな子にはお湯を与える(一定の温度に保てる給水器もあります)など、その子に合った方法を見つけてあげてください。
⑤熱中症が疑われたら、すぐに病院に連れてきて!自己判断は危険です。
熱中症は非常に死亡率の高い病気のため、早めに治療をスタートするのが肝心です。熱中症が疑われたらすぐに病院に連絡し、来院してください。来院するまでの間、おうちや病院までの移動中にできることをいくつかお伝えします。水が飲めそうなら水分補給を行います。体温が高い場合、水で濡らしたタオルを身体にかけたり霧吹きで体の表面を濡らし、扇風機やうちわで風を当てて体表から熱を逃がします。また、首・わきの下・足の付け根など太い血管が通る箇所に保冷剤(タオルで巻いたもの)を当て、循環血液の温度を下げることも効果的です。ただし、体の冷やしすぎには注意が必要ですし、熱中症ではない場合もありうるので、実際には病院からの指示に従って動くようにしてください。
熱中症はしっかりと対策をすれば防げる病気です。快適な生活環境をつくり、冷却グッズなどをうまく活用し、この夏を乗り切りましょう!