新しい年になって、あっという間に1月も中旬になり、時がたつのは早いものですね。イベントもこれから春に向けて次から次へとやってきます。
そこで、特にワンちゃんで注意していただきたいのが、2月14日・・・そう、バレンタインデーです!
この時期は、「手作りチョコの材料を食べてしまった。」、「チョコレートが入ったクッキーを食べてしまった。」、「チョコレートを食べた後、特に調子が悪くならなかったので様子を見ていたら、げぇげぇ吐くようになってしまった。」などなど。チョコレート関連の問い合わせや来院が増えます。
そこで、ワンちゃんのチョコレート中毒に関する基礎知識を、以下にかいつまんでお伝えしたいと思います。
チョコレートには原材料としてカカオが使われていますが、そのカカオには眠気の防止や集中力アップに役立つカフェインの仲間(特に中毒に関連するのはテオブロミンという成分)が含まれています。私たちヒトがおやつやコーヒータイムに食べるくらいの量であれば適度なリラックス効果がありますが、それがワンちゃんのように小さな体に多量を食べてしまうと中毒量に達してしまい、チョコレート中毒を発症します。もう少し深堀りすると、テオブロミン代謝に関わる酵素の機能不全をもつ個体がいるためにワンちゃんはチョコレート中毒を発症するリスクが高く注意が必要とされています。
テオブロミン(カフェインの仲間)を摂り過ぎると、神経系や循環器系が過剰に興奮状態に陥るため、数時間以内に(遅くとも12時間以内に)中毒症状をしめすようになります。最初は、興奮して、落ち着きなくソワソワする、よだれが多くなる、多飲、嘔吐、下痢、尿失禁などの様々な症状が出てきます。大体はこのくらいで収まることが多いのですが、摂取量が多いと、さらに進行して、運動失調、頻脈・頻呼吸、不整脈、ふるえなどが目立つようになり、重症例では、けいれん重積発作や昏睡状態に陥り死亡することがあります。ちなみに、中毒成分を体重1㎏あたり100㎎~200㎎摂取すると食べたワンちゃんの半数は亡くなってしまうとされています。
チョコレート中毒の治療は、食べてしまった量とタイミングが分かれば、それに応じて催吐処置を検討します。かなりの量であった場合は全身麻酔下での胃洗浄を行う場合もあります。食べたのが少量で症状も軽度の場合は、活性炭(有毒物質の吸着)の使用と胃腸の保護治療などで経過を見ていきます。
最近のチョコレートは、ミルクチョコレートが多いので、チョコレートそのものよりもそこに含まれている脂肪分によって、数時間から数日後に嘔吐や下痢を主徴とする「胃腸炎や膵炎」発症することも多く、広い意味ではこれもチョコレート中毒に含まれると考えていいと思います。特に膵炎を発症すると死に至る危険もあるため、早期の治療が必要です。
おそらく多くの方が知りたいのは、チョコレートをどれだけ食べると危険なのか!?ということだと思いますが、チョコレートのカカオ含有量やテオブロミン含有量はその製品によって一定しないとされており、どれだけのチョコレートを食べると危険なのかは結局「分からない」です。
ですが、今はインターネット時代で、どれだけの体格のワンちゃんがどんなチョコレートをどれだけ食べたかでその危険性の参考値を教えてくれるものもありますので、夜間などすぐには受診できない場合は、インターネット情報(このコラムも含めて)を参考にしてみるのもいいかもしれません。
非常に重要なことは、そのチョコレート製品にどれだけのカカオ成分が入っているか一定せず、症状の出やすさに個体差があることから、チョコレートを食べてしまった場合は、動物病院を受診されることが一番であるということです。その際は、食べてしまったチョコレート製品の商品名がわかると助かります。
これからの季節(どの季節もですが)、とっさに食べられてしまう可能性のある身近な食品「チョコレート」、もしもの時に慌てずに対応するための参考になれば幸いです。