どうぶつ医療コラム

わんちゃんの甲状腺機能低下症について

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こんにちは。獣医師の出岡です。

“うちのわんこ、なんだか最近元気がない…。毛も薄くなってきたし、おしっこの量やお水を飲む量が増えてきたような気がする”

もしかしたら、それは甲状腺機能低下症かもしれません。

 

〇甲状腺機能低下症とは?

甲状腺機能低下症とは甲状腺ホルモンが欠乏する病気で、おもに中高齢以上のわんちゃんに多い病気です。甲状腺ホルモンは全身の代謝を活性化する作用を持ち、具体的には体温上昇、心機能亢進、成長促進、基礎代謝の上昇、赤血球生成の亢進などがあります。そのため、不足することで全身にさまざまな症状を引き起こします。

 

〇症状

<全身の症状>

活動性低下、肥満、低体温、徐脈、多飲多尿(おしっこの量やお水を飲む量が増える)、貧血など

<皮膚の症状>

体幹部の脱毛、ラットテイル(ネズミのしっぽのように尾の毛がほぼなくなってしまう状態)、繰り返す膿皮症などの皮膚症状、外耳炎、色素沈着など

<神経症状>

ふらつき、ナックリング、顔面神経麻痺などの末梢神経障害、昏睡など

 

〇原因

甲状腺機能低下症のうち、そのほとんどは甲状腺組織の破壊によるものであり、リンパ球性甲状腺炎や原因不明の甲状腺萎縮が知られています。まれに、下垂体や視床下部の異常、腫瘍などが原因となることもあります。

 

〇診断方法

血液検査によって、甲状腺ホルモンの低値や甲状腺刺激ホルモン(下垂体から出るホルモン)の高値を確認します。画像検査(エコー検査やCT検査など)によって甲状腺の萎縮を確認することもあります。なお、甲状腺以外の病気で甲状腺ホルモンが低下することもあるため、他に病気が隠れていないかを血液検査・画像検査によって確認する必要があります。

 

〇治療

甲状腺ホルモンを補充するため、毎日甲状腺ホルモン製剤を飲むこととなります。治療中は定期的に血液検査を行い、甲状腺ホルモンの数値や症状に応じてお薬の量を調整します。治療開始後、活動性低下は1週間ほどで良くなりますが、高脂血症や貧血の改善には数週間、皮膚症状や神経症状の改善には数カ月かかることもあります。

低下した甲状腺の機能が回復することはないため、基本的には一生投薬を続ける必要がありますが、予後は良好です。

 

甲状腺機能低下症は有用な予防法がないため、早期発見、早期治療が大切です。「うちのわんこ、なんだか最近元気がない…。毛も薄くなってきたし、おしっこの量やお水を飲む量が増えてきたような気がする」といったような、動物が出しているサインに気付いたら、早めに動物病院へご相談ください!

 

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