どうぶつ医療コラム

猫のリンパ腫治療のあれやこれや(前編)

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近年、猫の寿命の延長によりガンを患う例が多くなりました。ガンによっていつもの日常が変わってしまうのは、やることが増えたり、考えることが増えたりするので、動物自身はもちろんその家族にとっても心配や不安の種となります。

そこで今回の記事では、猫で一般的な悪性腫瘍であるリンパ腫の治療に関して、前編で抗がん剤のことを中心にご紹介し、後編でプロトコールや治療上の心配や不安を少しでも減らせるように当院のリンパ腫治療に対する考え方もお伝えしたいと思います。つらつらと書いていますので、お時間のある時にお付き合いいただければ幸いです。

猫のリンパ腫には、その発生部位によって、消化器型、鼻腔型、縦隔型、腎臓型など様々なタイプがあります。それぞれのタイプに対してさまざまな治療(抗がん剤治療、外科手術、放射線治療など)が実施されますが、以下抗がん剤治療の話をしていきたいと思います。

リンパ腫は白血球の中のリンパ球のガンですので、全身性疾患と考えるのが一般的です。ですので、猫のリンパ腫治療のメインは抗がん剤治療です。抗がん剤治療は、数種類の抗がん剤を組み込んだ多剤併用療法が実施されます。その代表的な薬剤は、シクロフォスファミド(C)、ビンクリスチン(O)、ドキソルビシン(H)、プレドニゾロン(P)の4種類です。各薬剤にアルファベットがふってありますが、抗がん剤のプロトコールを示す時に使用されます。

猫も犬も、基本的に上記4種類を使用したCHOPプロトコールが使用されます。しかしながら、猫では少し事情が異なり、近頃はそれ以外の方法を選択する方が生活の質が保てるケースがあるため、選択肢は少ないながらも他のプロトコールを紹介することがあります。

各薬剤の猫での特徴をお伝えします。

まずはシクロフォスファミドです。猫の薬用量は、以前は250㎎/㎡が一般的でしたが、近頃は他の薬剤とのタイミングや症例の許容量を考慮しながら、それよりも高用量で使用することが多くなりました。というのも、リンパ腫が再燃(再び猛威を振るうこと)するのはシクロフォスファミドの投与後が多かったため、シクロフォスファミドは以前からもっと高用量で使えるのではないかと検討されてきたからです。犬では副作用との兼ね合いで同様ではありませんが、猫は攻めの薬剤として期待されています。

次にビンクリスチンです。この薬はリンパ腫を相手によく効いてくれるのですが、猫の場合は、消化管の運動を抑制する副作用が強く出てしまうことがあり、食欲不振が長期的に続いてしまうことが多いと言われています。ただ、以前と異なり、便利な食欲増進剤を使用することでこの問題は解決できることも多くなりました。当院では、「Mirataz」というアメリカで認可されている耳に塗布するタイプを使用しています。

ドキソルビシンは、強力かつ頼もしい抗がん剤です。この薬剤のみを使用するプロトコールが存在するくらい効果が認められているのですが、猫では腎毒性が知られています。ご存知の方も多いと思いますが、高齢の猫は腎機能が低下していたり、低下してくるケースをよく認めます。リンパ腫治療は、高齢の猫に対して実施する場合が多いので、この腎機能が問題になることがあります。また、静脈内点滴で投与するため、猫の性格によっては鎮静処置が必要になる場合があります。

プレドニゾロンは、非常に使いやすいステロイドホルモン剤で、日常の診療でもよく使う薬剤です。このプレドニゾロンがリンパ腫には効きます。ただ、がん細胞が耐性を獲得することも多いため、注意が必要です。

つらつらと抗がん剤の概要を記載しましたが、参考になれば幸いです。

後編では、プロトコールや当院の工夫と考え方もつらつらとお伝えできればいいなと考えていますので、どうかお付き合いください。

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