こんにちは、獣医師の出岡です。私事ですが、わたしは猫を2匹飼っています。仕事が終わりただいまーと家に帰るともふもふ達がゴロゴロスリスリと出迎えてくれて、とても癒されます。しかし、かまってほしいときに「んなーお!!なおーーーん!」と大声で泣きわめくので、夜わたしが寝ている時に鳴かれると少々困ります。また、最近はゴミ箱を漁ることを覚えたので、設置するのを諦めました…。
このように、動物を飼っていると楽しいことばかりではなく困ったことも多いのが現状です。今回は動物たちの困った行動のひとつ、ウンチを食べてしまう行動=“食糞症”についてのお話をします。ときどき、わんちゃんの飼主様から「うちの子、自分のウンチ????を食べてしまうんです…。どうしてでしょうか?止めさせたいんですけど…」と相談を受けることがあります。子犬だと正常な行動のことが多いですが、もしかするとなにか病気が隠れているサインかもしれません。原因と対策について、順番に説明していきます。
〇どうしてウンチを食べてしまうの?
・食事が足りないことによるエネルギー補給として
・飼い主の関心を求める行動として
・退屈しのぎのため
・過去に飢餓状態を経験しているため
・ウンチのニオイ、味、質感が好きだから
・不安な気持ちを紛らわせるため
・病気が隠れている場合(消化不良や食欲増進を引き起こす病気)
子犬の場合、お腹が空いているからウンチを食べる、ウンチを食べると飼い主さんがかまってくれるから繰り返してしまう、といった理由が多いです。ほかに、遊びの時間が足りないため退屈しのぎとしてウンチを食べてしまう、過去に飢餓状態を経験しているためなんでも口にしてしまう、食べ物としてウンチが好きなどの原因も考えられます。成犬の場合、飼い主にかまってもらうため、不安・退屈を紛らわせるために食べることがあります。さらに、消化不良や食欲増進を引き起こす病気が隠れている場合や急激な食事制限、食欲増進作用のある薬の投与が影響している場合もあります。
〇どうすれば止めさせられるの?
①(子犬の場合特に)食事量を増やす&一緒に過ごす時間を増やす
まずは食事量や食事の内容を見直しましょう。量が単純に少ない場合もあれば、食事内容が物足りない場合もあります。子犬だけでなく成犬においても、急激なダイエットでお腹が空いてしまいウンチを食べることもあります。そして、食事を変えたタイミングで食糞をするようになったのであれば、以前の食事に戻すことで改善することもあります。また、遊び・散歩の時間をしっかり確保することでわんちゃんの満足感を高めることも重要です。
②ウンチをするタイミングを把握し、排便後はおもちゃやおやつで興味を引きつつ、すばやくウンチを回収する
①の対応でおさまらない場合には、生活環境や対応を見直しましょう。わんちゃんがウンチを食べ始めたとき、「あっ!こら、やめなさい!」「キャー!!」と、必死に止めに走っていませんか?もし大騒ぎしてしまっているとしたら、わんちゃんは「ウンチを食べたら、お母さんたちが駆け寄ってきてくれるワン!」もしくは「自分のものを盗られてしまう、早く食べなきゃ!」と学習し、食糞の頻度が増してしまいます。では、どうすればいいのでしょうか?まずは、ウンチをするタイミングを把握します。その子によって、食後〇分後にする、△時ごろにするというのが段々と分かってくるはずです。そろそろウンチの時間かな、と思ったらトイレへ誘導します。排便後はトイレから離れた場所へ呼び、お気に入りのおもちゃやおやつを与えます。わんちゃんの注意をそらしている間にウンチを回収します。もし回収が間に合わずウンチを食べ始めてしまった場合は、できるだけ冷静な態度でウンチを回収します。決して「こら!」「キャー、待って待って!」など大きなリアクションはしないようにしましょう。
③ウンチをするタイミングを把握し、散歩中に排便させるようにする
家のトイレでのトレーニングのほかに、ウンチのタイミングに合わせて散歩をするのも効果的です。ウンチが出るのと同時にお尻に口を付けて食べてしまう子でも、散歩中は食糞しないことが多いです。
④隠れている病気がないか、検査する
ご飯の量はしっかり食べているのに痩せている、元気がなくなってきた、下痢がずっと続いている・・・このように、気になる症状があるときには消化吸収不良や食欲増進を引き起こす病気が隠れているかもしれません。例えば、膵臓から十分に消化酵素が分泌されない病気(膵外分泌不全)にかかっていると、食物を十分に消化できないため、しっかりご飯を食べていてもお腹が空いてしまいます。ほかにも、消化管内に寄生虫が寄生していたり、慢性腸炎などにかかっていると栄養をうまく吸収できずお腹が空いてしまうことがあります。一方、食欲亢進を引き起こす病気としては、糖尿病初期やクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)などがあります。もしも何らかの病気が疑われる場合には、糞便検査や血液検査、レントゲン・エコーなどの画像診断により診断を行います。見つかった病気の治療により食糞行動がおさまれば、その病気が原因だったことが分かります。
解決策をいくつかご紹介しましたが、食糞症は一度クセになるとなかなか治すのが難しい行動のため、根気強く向き合うことが必要です。また、病気が隠れている可能性もあるとなると、心配になりますよね。病気だけではなく、食糞症をはじめとした動物たちの困った行動に関しても当院までお気軽にご相談ください!