どうぶつ医療コラム

猫の上部呼吸器疾患(いわゆる「猫カゼ」)について

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こんにちは。獣医師の出岡です。

第6回目となる今回は、多くのネコちゃんが悩まされているであろう猫の上部呼吸器疾患、いわゆる「猫カゼ」についてお伝えします。猫カゼはウイルスや細菌による感染症であり、目ヤニ・くしゃみ・鼻水・元気食欲の低下などヒトの風邪と同じような症状を示します。原因となる猫ヘルペスウイルスⅠ型と猫カリシウイルスは猫界においてかなり蔓延しているウイルスです。感染させないようにするのは非常に難しいため、感染しても発症させないこと、発症した場合の症状をコントロールすることが非常に重要です。

 

原因・症状

主に猫ヘルペスウイルスⅠ型や猫カリシウイルスによる感染症ですが、細菌の単独感染や混合感染により発症することもあります。主な原因となる2種類のウイルスについて説明します。

〇猫ヘルペスウイルスⅠ型

感染猫の目ヤニ、鼻水に大量に含まれており、他のネコがそれらを口や鼻、目の粘膜を介して取り込むことにより感染が広がります。症状としては、涙の増加、目ヤニ、結膜炎、鼻炎、食欲低下などの風邪のような症状が見られます。多くは2~3週間で症状が回復しますが、一部の猫は鼻炎や結膜炎が治りきらず、ズルズルと引きずることがあります。一度ヘルペスウイルスに感染した猫は生涯ウイルスを保有し続け、ストレスにさらされるとウイルスが再活性化するため、再度発症することも多いです。

〇猫カリシウイルス

ヘルペスウイルスと同様、感染猫の目ヤニ、鼻水にほかの猫が触れることにより感染が広がります。風邪症状に加え、カリシウイルスに特徴的な症状として口内炎が見られるほか、関節炎、肺炎が見られることもあります。症状は2~3週で回復しますが、回復後もしばらくはウイルスを排出するほか、生涯ウイルスを保有し続ける猫もいます。

 

診断

臨床症状から推測し、治療を開始することがほとんどです。多くの猫がウイルスを保有している事実から、抗原検査や抗体検査はあまり行われません。

 

治療

幼弱な子猫や免疫力の低下した猫では重症化しやすいため、対症療法と二次感染・混合感染の予防がかなり重要です。そのほか、目ヤニ・鼻水・くしゃみなど局所的な症状が出ている子には点眼薬や点鼻薬を使用し、重症化を防ぎます。

〇補助療法

発熱や鼻水、くしゃみのため食欲が落ちることが多く、脱水や栄養不足に陥ることも多いです。全身状態が悪いときには輸液のほか、嗜好性の高い食事を与えたり食欲増進剤の投与を行います。

〇二次感染・混合感染の予防・治療

二次感染の予防または治療のために抗菌薬の内服(あるいは注射)を行います。眼の症状がある場合は点眼薬、くしゃみ・鼻水が出る時は点鼻薬を使用します。

〇抗ウイルス薬

ヘルペスウイルスの関与が疑われる場合、全身的な抗ウイルス薬の投与が行われることがあります。抗ウイルス薬を含む点眼薬もあります。また、猫インターフェロンはその抗ウイルス作用、免疫増強作用により慢性化を予防することが期待できます。

〇気道の乾燥予防に

生理食塩水を蒸気にしてネコちゃんに吸わせる、ネブライジングという治療法があります。気道の乾燥予防に効果的です。

 

予後

若齢猫や免疫力が低下している猫では予後は悪く、死亡する例もありますが、一般的に2~3週間で症状が治まります。ただ、一度症状が治まっても再発を繰りかえす子や、生涯目ヤニ・鼻水・くしゃみに悩まされる子も少なくありません。症状の程度にもよりますが、生涯にわたって管理が必要です。

 

予防

〇混合ワクチンの接種

原因となる猫ヘルペスウイルスⅠ型と猫カリシウイルスは猫界においてかなり蔓延しているウイルスです。感染させないようにするのは非常に難しいため、感染しても発症させないこと、症状をコントロールすることが非常に重要です。混合ワクチンを接種することで、感染予防はできませんが発症を抑えることが可能です。子猫のうちは、2カ月齢で1回目のワクチンを、4カ月齢になるまで1カ月ごとにワクチンを接種しましょう。その半年~1年後にワクチンを接種した後は、1年毎もしくは3年毎に接種を行います。成猫になってからの接種頻度としては、猫風邪を持っておらず単独飼育の場合は3年毎の接種でもかまいませんが、猫カゼ罹患歴のある子に関しては、1年毎にワクチン接種を行うことで発症予防効果がより期待できます。また、複数飼育のおうちでは猫カゼの発症リスクが高まるため、症状の有無にかかわらず全員1年毎の接種をおすすめします。

〇ストレスの少ない生活環境を整える

猫風邪の原因の一つである猫ヘルペスウイルスⅠ型はストレスにより再活性化し、発症を引き起こすため、ストレスの少ない生活を送ることも重要です。

 

たかが猫カゼ、されど猫カゼ。生涯お付き合いが必要な病気です。私の飼い猫も毎日目ヤニ・鼻水が出ていますが、こまめに汚れを拭き取り、症状がひどいときには点眼薬を使用しています。その子に合った治療をご提案させていただきますので、症状が出た際は早めのご来院をお願いします!

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