どうぶつ医療コラム

中高齢のねこちゃんに多い慢性腎臓病

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こんにちは。獣医師の出岡です。

今回は猫の慢性腎臓病についてのお話です。中高齢の猫ちゃんで、「最近よく水を飲むようになった」「おしっこの量が増えた」「嘔吐が増えた」「下痢あるいは便秘気味である」といった症状がみられる場合、慢性腎臓病にかかっている可能性があります。今回は慢性腎臓病の症状や診断方法について学んでいただき、早期発見のために飼い主さんができることを知っていただきたいと思います。また、慢性腎臓病と診断された後の治療内容、予後についてもお伝えします。

 

慢性腎臓病とは?

腎臓は血液から老廃物を取り除き、尿を作る臓器です。左右に2つある臓器で、一方の腎臓が弱っていても、もう一方の腎臓がその分働き、その機能を保ちます。慢性腎臓病とは、ゆっくりと時間をかけて腎臓の機能が低下していく病気です。中高齢の猫に多い病気ですが、若齢の猫にも起こりうる病気です。腎臓の機能が弱まると、尿を濃縮する機能が落ちます。それにより、おしっこの量が増え、お水を飲む量も増えます。また、体が脱水状態になるため、食欲不振や嘔吐・便秘・下痢などの消化器症状が認められます。腎臓病が進行すると、貧血も進んでいきます。

 

症状

・多飲多尿(おしっこの量とお水を飲む量が増える)

・食欲不振:食べ物の好みが変わったり、日によってフードの種類を変えないと食べなくなることも。

・嘔吐や悪心:実際に吐かなくても、口をくちゃくちゃさせるのは気持ちが悪い時のサイン。

・下痢もしくは便秘:脱水になると便秘に⇔蛋白尿などで腸がむくんでいると下痢気味に

・貧血:疲れやすい、粘膜が白っぽいなど

 

診断方法・治療法

血液検査により腎数値の上昇が認められます。ただし、一度腎数値の上昇が認められたからと言ってすぐに判断はせず、1~2カ月後に再評価することが大切です。尿検査では尿比重の低下がみられるほか、タンパク質が漏れ出ていることもあります。また、レントゲン検査やエコー検査により腎臓の大きさ・構造に変化がないかを確認します。高血圧は腎臓病の悪化を早めるため、血圧測定も行います。

過去に急性腎障害や尿路結石、膀胱炎などの尿路系疾患に罹ったことがある場合、慢性腎臓病になりやすくなるため、過去の既往歴を確認することも重要です。

慢性腎臓病は血液検査上の腎数値や血圧などの指標によりステージ1~4まで分類されます。数字が大きくなるほど重症度が増します。

〇ステージ1

血液検査でも異常を見つけることが難しいですが、腎臓の機能は33%程度まで下がっている可能性があります。ほぼ症状はありません。新鮮な水を常に飲めるようにし、脱水を防ぎます。腎臓の機能自体は低下し始めているため、腎臓に副作用のある薬剤や腎臓から排泄される薬剤は用量を下げるなど注意して使用します。タンパク尿や高血圧が認められる場合、血圧を下げる薬を服用したり、ミネラル量を調整した腎臓病の療法食(※1)を使用します。定期的に血液検査や尿検査によるモニタリングを行います(3~6カ月毎)。

〇ステージ2

血液検査や尿検査で異常値が発見され始めます。腎臓の機能は33%~25%程度まで下がっています。個体により、食欲不振や消化器症状が認められることがありますが、あまり臨床症状は強くありません。引き続き、新鮮な水を常に飲めるようにし、定期的に血液検査や尿検査によるモニタリングを行います(2~3カ月毎)。薬の内服が可能であれば、腎臓の保護作用があるといわれているベラプロストナトリウムの服用を検討します。食欲があるうちに腎臓病の療法食を始めるのがおすすめです。腎臓に副作用のある薬剤や腎臓から排泄される薬剤は用量を下げるなど注意して使用します。

〇ステージ3

腎臓の機能は25%~10%まで下がっています。食欲不振や消化器症状が顕著に認められるようになります。定期的な皮下補液により腎臓の保護を行うとともに(※2)、嘔吐・下痢・便秘に対する対症療法が必要になります。また、高リン血症がある場合、リン吸着剤を服用します。貧血がある場合、鉄剤の服用や造血作用のあるホルモン剤の注射を開始します。腎臓に副作用のある薬剤や腎臓から排泄される薬剤は用量を下げるなど注意して使用します。予後は個体によりかなり開きがあり、数カ月で次のステージに進行することもあれば、5年ほどステージ3のままのこともあります。定期的に血液検査や尿検査によるモニタリングを行います(1~2カ月毎)。

〇ステージ4:腎臓の機能はついに10%以下まで低下している状況です。このステージになると、食欲不振や消化器症状が激しく、どんどん体力を消耗していきます。場合によっては、静脈点滴や経鼻カテーテルによる食事の補助が必要になることも。予後は短くて数日、長くて2カ月ほどのイメージです。

※1 腎臓病の療法食:タンパク質やリンの量を制限したフードです。一般のフードに比べて若干嗜好性が劣ることもあり、個体によっては食べてくれないこともあります。無理に療法食だけを与えようとせず、食事量を確保することを第一に考え、食べてくれるものを中心に与えることが大切です。

※2 定期的な皮下補液:皮下補液により脱水を補正することで、腎臓への血液循環を確保し腎臓を保護する作用があります。脱水が著しい場合は静脈点滴を行うこともあります。個体の性格によっては定期的な通院が難しい場合もあり、その場合は症状があるときに限った通院、定期モニタリング、あるいは在宅での補液療法を選択することもあります。

 

残念なことに、腎臓はその機能が25%以下にならないと、明らかな症状が出ません。「いつもと様子が違う」と感じて来院されたときには、ステージ3まで進行していた!なんてことも多いです。そのため、血液検査をはじめとして健康診断による早期発見に努めることが重要です。7歳未満の猫では1年に1回、7歳以上の猫では半年~1年に1回の健康診断を行いましょう。また、いつもの飲水量や尿量、食欲について把握し、早めに異変に気付けるようにすることも大事です。体重は見た目だけでは判断がつかないことも多いので、おうちでの体重測定もおすすめです。

猫は本能的に弱みを見せないように気丈にふるまう生き物です。一見元気に見えても、実は病気だったということもしばしばあります。おうちでよく様子を観察しつつ、いつもと同じ様子でも定期健診を受けるようにするのがおすすめです!猫ちゃんの長生きのために、ぜひ検討してみてくださいね。

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