どうぶつ医療コラム

猫ちゃんの完全室内飼育のすすめ

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厳冬期の2月ですが、だんだんとリンゴの蕾も大きくなっており、暖かい春が訪れるのが楽しみですね。これからの暖かくなる季節は外の猫から生まれた子猫が多くなってくるので、近所で子猫を保護されたり、譲渡会や保護団体さんを通して子猫を迎え入れたりして、ドキドキワクワクの猫ちゃんとの生活をスタートするケースが多く見られます。

そんな中、ふと猫とどう生活していくのか悩む場合があります。ずっとお家にいさせて窮屈ではないか?散歩って必要?外に野良さんはいるけど、この子も外に行きたいのかなぁ?など、色々と浮かんでくると思います。

もちろん皆さんご存知の通り、猫と生活をスタートさせる際は完全室内飼育が推奨されています。ただ、色々な意見をみていくと、完全室内飼育とするのか外飼い(外出自由)とするのか、迷う場合もあるかもしれません。そこで、今回は「完全室内飼育のすすめ」として室内飼育と外飼いについて、少し考えてみたいと思います。

 

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室内飼育と外飼いの違いとして、まず第一に言えることは、平均寿命が大きく異なるということです。

2022年の全国犬猫飼育実態調査によれば、猫の平均寿命は全体で15.62歳ですが、室内飼育で16.02歳、外飼いで14.24歳でした。約2年の差がありますが、その2年がもたらしてくれる時間は何物にも代えがたいものではないでしょうか。外の環境は過酷です。外へ行く猫は、交通事故や猫同士のケンカ、野生動物やダニ等がもたらす感染症の発症など、色々な困難に直面することになります。若くして亡くなる命があるため、平均寿命は大きく引き下げられることになるのです。

室内飼育に関しては、ずっとお家にいさせて窮屈ではないか?と考えていらっしゃる方が多いと思います。確かに私たちの感覚では、そう思う気持ちは十分理解できますが、環境を整えてあげれば、外の危険と縄張り争いからのストレスから解放されて、猫は十分幸せに暮らすことができると思います。

猫は、十分な食料と安全な場所を確保できている場合、特別な理由がない限り縄張りからほとんど移動しないことがわかっており、さらには垂直方向への移動や動きが可能でかつ外を見ることができる窓などがあれば、自分の安心できる縄張りが室内で作られます。

ちなみに1000頭近くの外出自由の猫を調べた報告によると、そのほとんどが庭から半径100m以内で生活していることがわかっています。他の狩猟動物と異なり、必要に駆られなければそこまで遠くには行かず、ある程度の空間範囲で生活することがうかがえます。

窓辺にいて窓から外をみている場合、外でゆれる葉や枝、鳥や虫が飛んでいる姿を眺めていると考えられています。そこから「外に出たいと思っている」とつなげるのは、もしかすると私たちヒトの考えすぎなのかもしれません。

これらのことから、室内では、キャットウォークやキャットタワーなどを設置して上下運動が出来るようにし、さらには上でのんびりくつろげるようにすることが推奨されます。さらに言えば、そこで窓から外を眺めることができればベストだと思います。猫は必要に駆られなければ外にいても行動範囲が比較的狭いのですが、それでも室内では運動範囲が限られますので、よく遊んであげることが重要です。キャリーやハーネスなどをうまく利用して外の風に当たったり、散歩をしたり、好奇心を満たすのもいいと思います。

考え方は色々とあり、どれが正しいとは言えません。以上から私の考えをまとめると、猫がひとつ屋根の下で自身の生活と安全が確保されることで、外で縄張りを守る必要とストレスがなくなり、さらにはキャットタワー等の上でのんびりと外を眺めて好奇心を満たし、時には飼主とたくさん遊ぶことができる、こうした環境が整えば室内で幸せな生活を送ることができるのではないかと考えています。

一人の飼主であり獣医師の考えとして、参考になれば幸いです。

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