どうぶつ医療コラム

ねこちゃん「元気で食欲もあるが痩せてきた」

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こんにちは、獣医師の出岡です。前回はわんちゃんの甲状腺機能低下症について紹介しましたが、今回はねこちゃんに多い甲状腺機能亢進症についておはなしします。甲状腺機能亢進症とは、甲状腺ホルモンが必要以上に多く分泌される病気で、中高齢の猫に多い病気です。「年齢の割に食欲もあるし元気いっぱい!」に見えるため、すぐに病気だと気づきにくいことも多いです。しかし、放っておくと心臓や胃腸をはじめとした全身の臓器に負担をかけ、身体が痩せてボロボロになってしまいます。甲状腺機能亢進症について知っていただくことで、早期発見につながればと思います。

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発症要因

甲状腺の過形成(細胞の数が増えること)、腫瘍によって甲状腺ホルモンが過剰に分泌します。甲状腺ホルモンは全身の代謝を活発にするホルモンです。そのため、落ち着きがなくなる、食欲が増す、だんだんと痩せていくなどの症状がみられます。

 

ねこの甲状腺機能亢進症の特徴

・中高齢の猫に多い

・食欲はあるのに段々と痩せてきた ※食欲が低下することもある

・元気はある、もしくは元気がありすぎて飛び回っている

・飲水量が多く、おしっこの量も多い

・嘔吐や下痢の頻度が増えた

・攻撃的になる、目がぎらついている

ヒトで例えるなら、“あまり睡眠がとれていないが、毎日エナジードリンク(=ここでいう甲状腺ホルモン)を飲んでいるので、元気に動ける。心臓はバクバク、目はギンギン。初めのころはだましだまし頑張っていたけど、続けているうちに身体がボロボロになる”という状態でしょうか。体に鞭打って無理をしている状態である、ということが分かると思います。

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診断・検査

問診、身体検査に加えて、血液検査により甲状腺ホルモンの高値を確認します。そのほか、高齢の猫では腎臓や心臓などを患っていることも多いので、エコー検査やレントゲン検査を追加で行うこともあります。

 

治療法

治療法として、①甲状腺ホルモンの合成を阻害する内服薬を用いた内科療法、②甲状腺を摘出する外科療法があります。この病気は高齢猫に多く、手術はリスクが大きいため、内科療法を行うことが大半です。

①甲状腺ホルモンの合成を阻害する内服薬を用いた内科療法

甲状腺ホルモンの合成を阻害する内服薬を1日1~2回服用します。まずは低用量から始めて、食欲不振や嘔吐、下痢などの副作用が出ないかどうかを確認しながら用量を決めていきます。薬の服用中は定期的に甲状腺ホルモンの値をモニタリングします。注意が必要なのが、甲状腺機能亢進症の治療を始めることで慢性腎臓病が明らかになる、あるいは悪化する恐れがあるということです。そのため、甲状腺ホルモンと同時に腎数値をモニタリングすることが重要です。

②甲状腺を摘出する外科療法

腫大した甲状腺を手術で摘出する方法です。投薬が難しい場合や内科治療で改善が見られない場合に行います。甲状腺を摘出した後は甲状腺機能低下症になることもあり、その場合は甲状腺ホルモンの補充が必要になります。

 

甲状腺機能亢進症にかかっているねこちゃんは一見元気に見えますが、油断禁物です!「以前と比べて何か様子がおかしい」と思ったら、早めにご相談ください。また、中高齢になったら半年~一年に一度の健康診断がおすすめです。ねこちゃんにとっての1年は人間に換算すると4~5年です。定期的な健康診断で病気の早期発見に努めましょう!

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